窓と破風

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窓-1

窓-2

窓-3

破風


●被風
商業港として栄えたアムステルダムでは、16世紀後半から17世紀に運河沿いに伝統的なれんがを使った間口の狭い住宅が流行した。これは間口によって税金が決められたことや厳しい建築規制、軟弱な地盤、狭い敷地などのため。ファサードの大きさは大体同じになり奥行きが長く、4〜5階建てとなっている。アムステルダムの運河沿いの建物は4層縦長、正面に窓3列が一つの原型。隙間なく並ぶ家々のファサードは階段状のゲーブルが切り立ち、当時のイタリアのルネサンスの影響もあり、石とレンガで装飾を凝らしている。邸宅の所有者たちは破風(切妻屋根の端部分)、コーニス(軒部分の装飾)、窓枠などに独自のデザインをして競い合った。

●飾り窓

知る人は知っている飾り窓。アムステルダムは港町として栄えたためか公娼がいた。オランダ人はこの職業を認可することで病気の蔓延を防ぎ、犯罪の防止を図ったと言われる。

●窓を飾る

オランダ人の住居にかける熱意は有名。室内は掃除が行き届き、レースの揺れる窓辺には美しい花や置物を飾る。全面の窓は採光と荷物搬入のためにあるのだが、ヨーロッパ中でも最も大きなオランダの窓は住人の個性や趣向、センスなどを表すショー・ウインドウのような存在。それぞれの窓が各家庭の趣味や個性を、無言でしかし雄弁に物語っている。 そして夜でもカーテンを閉めない窓。カーテンを閉めないのは「私には何も隠すものがないから。覗きたい人はその人が決めることで私は一向にかまわない」といった明快な理屈らしい。カーテンを開け放った窓は、ある意味では最もよくオランダを象徴するものかもしれない。外向的で開かれた社会を示している。個性豊かな窓のディスプレイは、個性の尊重、そして個人主義を示しているよう。窓は社会を映している。

個人主義について

個人主義は「人間の尊厳」と「自己決定」からなる。「人間の尊厳」は個々の人間存在がそれ自体として価値をもつことで、これは個性の尊重と言える。「自己決定」は自分のことは自分で決めその責任は自分で取ることを原則として、これは自立と言える。 個人主義のベースとしてあるものは他者への「寛容性」、それは個人主義が例えば利己主義とは全く異なることを意味している。他者は自分とは違う意見や好みを持つ存在であることを明確に認識してお互いに認めあうことが「寛容性」だからである。