低い土地

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運河-1

運河-2

運河-3

運河-4

自転車

チーズ


The Netherland
国名が「低い土地」という意味をもつだけあって国土のほとんどが平地、一番高いところでも海抜約321m、30%が海より低い土地である。このような自然条件にあって「世界は神が造った。オランダはオランダ人が造った」という言葉があるように、この国の歴史は自然との脅威、水との戦いの歴史を物語っている。「水」の脅威を、安定した「地」に代えようとする人為的営為は、10世紀を境に本格化した。定住と生産のための豊かな「地」の獲得は、主に生産耕地として使用されるポルターと呼ばれる干拓地獲得の技術と、干拓地内部の浸水を防護・制御するダイクと呼ばれる堤防技術の発展の歴史に集約される。 低地オランダのランドスケープデザインは大きな空、コントロールされた水位が特徴で、それは所有する空間美学の独自性を表している。独特の風景として運河・風車・チューリップ畑・道路による幾何学的なデザインはオランダ人が長い時間をかけて計画的に造り上げた成果と言える。実用的で合理的な美学である。
このことを象徴させる芸術としてはエッシャーの「昼と夜」が面白い。彼の父は水利技師であり、整然と区切られた干拓地の風景とその上を飛ぶ鳥はまさにオランダのランドスケープデザインを連想できる。またエッシャーの描いた「水」や「地」を巡る空想的三次元空間の構成も、オランダならではの観点で見ることができる。


●運河

オランダの国土の約8%を河川、水路、運河が占める。オランダ中に張り巡らされた運河や内陸水路は延べ5000km。昔から水路が交通路として重要な役割を果たしてきた。 アムステルダムは都市計画により建造された5つの大きな運河が街を取り囲み、環状に市街を区画している。運河の数は総計165本。それにかかる橋の総数は1000にも及ぶ。その中でも建造後300年以上、唯一の木製橋として有名なものは設計家マヘレの名前を取ったマヘレの羽橋。また運河に停泊しているハウスボートには実際に人が生活している。ハウスボートは1995年で正式に警察の認可を受けたものが約2300隻。税金は1平方cm当たり年に7ギルダーと超安価。

●自転車
オランダは世界一の自転車王国。自転車専用の道路や交通信号、標識が溢れている。運輸省の資料によるとオランダでは1990年度の1人1日当たりの平均自転車走行距離は約3.3km。所用台数は12,437,000台。1992年度の自転車専用道路の距離が16,605km。ただオランダ人の自転車の乗り方はスピーディかつ乱暴で、信号無視などは日常茶飯事。また自転車盗難も多いため、防止にはかなり工夫をしているよう。5月14日は自転車の日として設定され全国に設置された35kmほどのコースをサイクリングで楽しむ。

●チーズ
12〜13世紀頃オランダでは干拓地を造り、排水路を掘り地下水位の安定に努めた。更に堤防を築き放牧に耐えられる国土を作り上げたのだが、こうして造られた広大な土地は農耕よりも酪農に適していた。13〜14世紀にオランダの酪農は飛躍的に発展する。加えて運河という水路交通は、重いチーズを運ぶためには好都合だったため輸出が始まった。
写真はその当時から350年以上も続いているアルクマールのチーズ市。4月から9月の間の毎週金曜日の午前中に町の中央部ワーフ広場で開催されている。まず仲買人と製造者との取り引き交渉、交渉成立後チーズ運搬人ギルドの職人達が板の上にチーズを載せて買い手の元まで運ぶという流れ。
チーズのオランダ人の1人当たりの年間消費量は日本人の16倍。1年に一人当たり15kgのチーズを食べている。